『千年女優』後記

後処理はまだまだ残っているものの、一応の終焉となった舞台版『千年女優』in大阪。
いつまでも浸っている場合じゃないんですが、昨晩見た夢の中の私は、まさにこれから本番だと言って一所懸命準備に勤しんでおりました。
大変だったけれど、楽しい日々。
ダイジェストバージョンとはいえ、まだ愛知公演も控えておりますので千代子風に言うならば「終わってなんかない!」というところなんですが、私がこの『千年女優』から抜け出せないのには理由があります。


ひとつに、たくさんの感想ブログの存在。
演劇は「あとに残らない」芸術です。webというものが発達していなかった十数年前なら、舞台版『千年女優』の存在は口伝えでしか広まらないわけで、きっと都市伝説のごとくウワサされて終わったことでしょう。しかし今回「『千年女優』の感想を書いてくださった方に、抽選で公演の記録映像をプレゼントします」という「ブログ感想キャンペーン」なるものを行っていることもありますが、『千年女優』と検索をかければ、アニメ版『千年女優』と並んで舞台版の感想をたくさん見つけることができます。まるで時代の生き証人のように。私たちが『千年女優』を舞台化した証は、こんな形でも残っていくのですね。
「抽選で5名の方に」とうたっているからには、もちろん検索にかかるすべてのブログを拝読しております。特にmixiの日記は一週間たつと検索にかからなくなりますから、拝読した上で後の抽選用に保存させていただいております。特に期限を設けていないこともあってか、検索をかけると日々新しい感想ブログに出会うのです。観終わってすぐの熱を持って書いてくださったであろう感想ブログも、時間をおいて書いてくださったであろう読み応えのある考察ブログも、そのどちらも私たちにとっては宝物です。書いてくださった皆さん、本当にありがとうございます。そんなわけで、毎日感想ブログを読んでいるため、『千年女優』の世界から抜け出せないのです。


ふたつめは、「舞台版『千年女優』を観れなかったお客さん」の存在。
2日ほど前、HEP HALLスタッフのYさんからこんな話を聞きました。
「昨日、親子連れのお客さんがホールを訪ねてきてね。『千年女優』のチラシはありませんか、って聞かれたから、ホールに保存してあったチラシを一枚分けてあげたよ。舞台化されたことを公演が終わってから知って、チラシだけでも欲しくてホールを訪ねてきてくれたみたい。すごい喜んでくれたよ。」とのこと。
この「チラシ」とは、ヘアメイクKOMAKIと写真家堀川さんの手によってそれはそれは美しく撮影された5人の女優が並ぶ「『千年女優』舞台化に向けての決意表明」みたいな、豪華三つ折りチラシのこと。有り難いことに好評で公演直前の2週間前にはなくなってしまい、急遽公演直前バージョンのチラシを追加で印刷しました。なので、この三つ折りチラシは公演当日にはほとんどお客さんの目に触れることはなく、数枚のみがホールの事務所にひっそり保存されていたのでした。そのチラシが、アニメ版『千年女優』ファンで舞台版『千年女優』を観ることができなかったお客さんの手のもとに。「すごい喜んでくれた」とありましたが、その話を聞いて舞台版を企画した者としては嬉しくもあり、情報を事前に届けることができなかったという反省もあり、とにかく感慨深い出来事だったのでした。
また、終わってから「『千年女優』のパンフレットは通販していないのですか?」とのお問い合せをいただきました。お届けしたいのは山々なんですが、完売となってしまい、諸事情ありまして増刷することはできません。大変申し訳なかったのですが、その旨お返事させていただきました。すると、それに対して更に返信が。実は公演があったことを後から知って、評判を聞いてパンフレット(とサウンドトラックCD)だけでも手に入れたいと思い、問い合わせをしてくださったとのことでした。このお客様にも、公演情報を事前にお届けすることができず申し訳ない気持ちでいっぱい。
どちらのお客様も、とにかく『千年女優』のことが好きで、『千年女優』に関わるものは何でも目を通したい、体験したいという気持ちから、劇場に足を運んでくださったり劇団に問い合わせをくださったのでしょう。終わってからもなお、原作『千年女優』の力がいかに大きいかということを痛感させられました。
他にも「『千年女優』の舞台をやっていたらしい!見逃してしまったが、見たかった!」というブログ記事をいくつか発見しました。恐らく原作者である今監督のブログやたくさんある感想ブログを読まれてのことかと思います。もうもう、すべてに感謝です。そして、ごめんなさい。この方たちのためにも、まずはDVDの作成と、愛知verの作戦を練らなければ。そして、その後の展開も。この『千年女優』を如何様にしてお客様に届けて行くべきか。TAKE IT EASY!の今後の活動をどうして行くべきか。冷静に、冷静に。
そんなこんなで、やっぱり『千年女優』の世界から抜け出せないのです。


みっつめは、関係者のブログの存在。とにかく、読んでください。『千年女優』の足跡がここにも。
脚本・演出 末満健一氏 「丑の刻参るまんとなく日記」
音楽 和田俊輔氏 「WADASYUN.WONDER.WEB」
音響 児島塁氏 「音響王子のshakty blog」
原作 今 敏氏 「KON'S TONE」(NOTEBOOKにて「千代子讃江」連載中!)
お客さんに愛され、関係者・スタッフに愛され、本当に幸せな公演でした。もう一度ここで御礼申し上げます。有り難うございました。
私のblog内カテゴリ「舞台版『千年女優』への道」も、もう少し続けさせていただきたいと思います。どうぞよしなに。